品川隆幸の古今東西(33) 復活その一 ~念願の工場新築2~

新しい仕事を作り出す工場として


まずは、どんなスペースが必要なのか、希望を書き出した。

工場内の各セクション毎の広さを検討。そこから階段の位置を決め、入口の位置も決めた。

次に営業と総務との連携を考えてレイアウトを決めた。

照明は全てLEDにし、配置を考えた。

床はOAフロアにし、各セクション毎の壁はパーティションで区切る。


そして、これまでの前工場では無かった多目的ホールと応接室、

会議室を作る。

トイレやロッカー、倉庫の位置も決め、駐車場と駐輪場のレイアウトも決めた。


また、考えるのは室内だけではない。

通常弊社ぐらいの規模の建物なら消防用の消火水槽を設置しなくてはならない。

しかし弊社は化学物質が多く、一旦引火したら水では消火できないため、消火水槽の代わりに化学消火器を設置することにした。

それ以外にも、雨水を貯めて消火用水と散水に使えるような雨水槽を設置し、前面駐車場の天井上を緑化しようと計画。


こんな希望を書き出し、図面化してもらった。

しかし、これでもまだ何かが物足りない。

せっかく新工場を建築するのだ。

今の仕事をこなす環境だけでなく、これからの新しい仕事を作り出すスペースも作るべきだと考えた。

そのためには当初の2階建から3階建てに変更し、さらにスペースを広げた。

200枚もの太陽光パネル

 

こうしてやっと満足いくレイアウト図面が出来上がった。

そしてようやく建築確認申請を役所に提出する準備をしている時に、ふと来客と原発の話題で話していた。

その時脳裏をよぎったのは、太陽光発電パネルの設置だった。

原発反対を叫ぶだけでなく、せっかく工場を建てるのであれば、これからの環境に留意した工場にすべきだ。

そのために太陽光発電は必須だと思った。


そこからさらに太陽光発電について勉強し、設置費用を見積もってもらった。

しかし、送られてきた見積書を見て目をむいた。

工場の屋根に200枚の太陽光発電パネルを設置するには、さらに躯体を強化しなくてはならない。

それには基礎から設計をやり直し、新たに加算分を積算し直すと、当初の予算から大幅にアップすることが分かった。

完全に予算オーバーだ。


しかし、そこで簡単には諦めたくはなかった。

再度銀行と相談し、当初2億円の予定だった融資額を、3億5千万円に変更した。

なんとか融資も下りることになった。

これで太陽光発電パネルの設置も可能となる。

しかし、何かをやろうと思うと、一つ一つ資金がいる。

我ながらここまでよくやるもんだと思う。


さぁ、ここからさらに大詰めだ。

太陽光発電を設置するために、「シナガワ太陽光発電所」を作り、経済産業省へ申請する必要がある。

太陽光で発電した電力は、関電に全部売却する契約を結んだ。

自社で使用する電力は、改めて関電から買い戻すという契約だ。


太陽光発電は、制度や期限、決め事が多くある。

その決め事を把握しながら一つ一つを選択していくには、私としてはかなりの勉強を必要とした。

その学んだことを自分の覚書として、ここに記録しておこうと思う。


シナガワ発電所

 

太陽光発電とは、出力50kw未満は住宅用と同じ、低圧で連携できる限界値だ。

この範囲だと資格や免許は不要だ。

しかし50kw以上の発電については、大規模太陽光発電施設という扱いになるため、特別な免許や資格が必要となる。

そこで、「シナガワ発電所(経済産業省に正式申請登録済み)」は、出力49kwで設備を整えた。


太陽光パネル(モジュールとも言う)は、大きさが約1,600×800×46mmで、重量が1枚15kg。

それが200枚。シャープ製の単結晶シリコン型。

出力保証は20年以上。

最大出力が1枚当たり245wのものに決めた。

シャープは奈良県の高取町にある壺阪寺にて、30年以上の実績がある。

現在もまだそのパネルは稼働中で、日本最古のものだそうだ。

今回自社で太陽光発電を導入するにあたってそのことを知り、技術力と実績に惚れ込んでシャープ製を選んだ。


太陽光パネルで発電した電力は直流であるため、電力を使用するには交流へ変換しなくてはならない。

そのための変換装置をパワーコンディショナーという。

略して「パワコン」とも言う。

このパワコンの変換効率はメーカーによっても違いがあり、また、太陽光パネルとの相性もあるらしい。

そしてこのパワコンは、パネルの発電量によってどれだけ設置するかが変わってくる。

結局は太陽光パネル200枚に対して、パワコンは9基設置することにした。


もしこれから太陽光発電の導入を検討されるなら、業者任せにせずに自ら勉強し、じっくり、ゆっくり選ぶことをお勧めする。

そして専門家とよく相談し、自分で納得いく手段を確実に選ぶことが最良の方法だろう。

慌てないことが肝要だ。

私の場合は事務所内にモニターを設置して、これら発電装置が正常に稼動しているかどうかを監視するシステムを採用した。

システムが決定したら、経済産業省と関西電力に書類を提出し、ようやく申請は完了したことになる。


後は敷地内に買電用と売電用の電柱を、関西電力に依頼して設置した。

この電柱はとても頑丈なものにしたので、せっかくだからと、そこに(株)シナガワの看板も設置することにした。

道路際に面した目に付きやすい位置に電柱を設置し、看板も目立たせることができ、一石二鳥だった。

一夜城作り


こうして一手間も二手間もかけた太陽光発電のシステムは、ようやく昨年の11月から売電を開始した。


振り返ってみると、2014年6月に、地元枚岡神社から神職さんに来てもらい、地鎮祭を行った。

そして7月には建築最終図面と契約書が出来上がり、9月には予定どおり上棟式を執り行った。

そして11月には竣工。着々と段取り良く事が進み、滞りなく新工場は完成した。

それもひとえに現場監督の並々ならぬ誠意と熱意の賜物だ。

そしてこの工事に携わってくれた関係者の方々の、一致団結した力は見事なものであった。


こんなに順調に勧められた工事は、私にとってこれが初めての経験だった。

私は息をつく間も無く事にあたり、全てが無事に終了した時には肩の荷が降りた安堵感と感謝の念でいっぱいだった。

しかし安堵の瞬間もつかの間。

建築引き渡し後の11月の三連休に、全社あげての引越し作業があった。

慣れない息子たちに変わって私が陣頭指揮を取り、連休終了後には何事も無かったかのように新しい工場で仕事を開始することができた。


後日談ではあるが、我が(株)シナガワの引越しは、傍目にはなぜそんなにスピディーに引越しが出来たかが不思議であるらしく、「どうやってそんなに早く引越しが完了したのか?」とよく聞かれた。


普通であれば、パソコン、机の移動や配置、棚、書類、機械などの移動量を考えれば、1週間はかかるだろう。

しかし私はいつも引越しの時には、豊臣秀吉の一夜城作りの逸話を念頭に置く。

この一夜城作りを可能にする鍵は、前もっての段取りに尽きる。


現在のレイアウトを新しい場所でもすぐさま再現するために、段ボール箱には小物以外は入れず、机などはできるだけそのまま、引き出しに物が入ったまま運ぶ。

それ以外にも、私の経験から細かなノウハウが色々とある。

今回はこんな細かなノウハウも、実践を交えながら息子たちに教える良い機会となった。


この新工場建築は私にとっては大仕事であったが、劇的とも言える感動と苦難の数ヶ月だった。

その間、たくさんの課題や壁にぶち当たり、それを解決するために色々勉強にもなった。

そして何より、周囲の協力してくださった方々には、言葉では言い表せることができないほどの感謝の気持ちでいっぱいだった。

(株)シナガワという会社も、私も、大勢の人に愛され、おかげさまで無事大仕事を成し遂げた。

これを機に会社もまた新たに生まれ変わることになるだろう。

これは私にとってはある種の復活を意味している。そしてまた他方でも、別の復活を果たそうしていた。


しかしここから先は話が長くなるので、また次回に書くことにしようと思う。


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