品川隆幸の古今東西(1)ハレとケ

実はこの歳まで「ハレとケ」という言葉を知らなかった。

ところが先日、縁あって岸和田に講演で呼んでいただくことになり、岸和田という街の起こりについて調べるうちに、岸和田の地車(だんじり)祭とこの「ハレとケ」の言葉の意味を知ることとなった。

 

岸和田といえば地車祭と多くの人がイメージするぐらい、全国的に有名な祭だ。

調べてみると地車は各町内に84基もあり、中でも、1基が約1億5千万円以上もするものが83基あるらしい。

海辺の旧市街で34基、山側の新興住宅地で50基。中でも有名なのは旧市街の34基の地車だそうだ。

 

地車祭は別名「喧嘩祭」と言われるほど、毎年何人かの怪我人や、場合によっては死者も出るほどの荒々しく勇壮な祭だ。

私は頭の中でそんな喧嘩祭の光景を思い浮かべながら、ロダン事務局スタッフの横田に、「岸和田といえば地車。地車と言えば喧嘩祭のイメージがぱっと浮かぶよなぁ。」と声をかけると、唐突に「社長、ハレとケって知ってますか?」と切り返された。冒頭にもある様に、この「ハレとケ」という言葉をこのときに初めて耳にした。どうもこの「ハレとケ」という言葉が、岸和田のだんじり祭りを理解する上で重要だというのだ。

 

「ハレとケ」とは、民俗学者の柳田國男によって提議づけられた日本人独特の世界観のことらしい。正式には「晴れと褻」と記され、「晴れ」とは「晴れの舞台」、「晴れの日」等の表現にもあるように、儀礼や祭り、年中行事などの「非日常」であり、さらに「めでたい」、「晴れやかな」事象を指すそうだ。

対して「褻(け)」とは、普段の「日常」を指す言葉で、神道の世界では日常の「褻(け)」が滞ることを「穢れ(けがれ)」というらしい。

 

祭りというのはまさにこの「晴れ」の状態で、それは平素つましく生活して、年に一度神に感謝を捧げるというのが、本来の祭りの意味だ。そこに照らし合わせると、岸和田のだんじり祭りもやはり年に一度の神への感謝のために行うというのが、その本来の目的となる。

決して喧嘩をしたいがための祭りではない。この一見荒々しい祭りも、つましい「褻」の日常から、豊穣、豊作への感謝と喜びが感極まり、一気に爆発した状態の表現であるという。

 

私自身は幼少の頃から住まいを転々としたため、地域の祭りに深く関わったという経験がなかったが、今改めて祭りとはなんぞやということを知った気がした。

日常の農作業などの共同作業を円滑にする上で、年に一度皆で酒を酌み交わし、歌い踊る祭りというのは貴重な潤滑剤となったのであろう。

 

また、幼い頃からこの「晴れと褻」を意識することは、子供の教育にも大変良い環境のように思う。

昨今、子供の教育に色々な問題や悩みを多く抱えている親御さんも多いと思うが、年に一度の祭りのために、大人から子供までお囃子の練習をしながら祭りを心待ちにするという風習は、子供たちの良い躾の場ともなる。昔はこうやって地域で子供を見守りながら育ててきた。そして地域で育った子供たちは、ごく自然と地域の風土に根ざした風習と価値観を身につけ、また次の世代へと伝えていく。「晴れと褻」という価値観と時間の流れの中で、子供たちは地道な日々日常の努力の大切さと、その末に実る豊穣と感謝を身を以て体験するだろう。

そんな土壌が祭りにはあるということを改めて認識した。

 

「晴れと褻」を意識するということは、慎ましやかな日常と、その結果受け取ることができる豊穣を意識することであり、自然のサイクルがあって生かされているという事実を、改めて意識するということにつながる。今回はこうやって岸和田に講演に招いていただくという機会のおかげで、今こうして生かされている自分自身も実感させてもらえた。

 

有り難いことだと感謝している。

 
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