品川隆幸の古今東西(3)モノ作りの根幹は農業

私がモノ作りに携わってかれこれ40年になろうとしている。

高度成長期を経て、生めや増やせやの増産の波にのって金儲けの道を邁進してきた。

しかし今、そんなモノ作りの道に対して疑問を感じている。

疑問を感じた発端は、バブル崩壊の時期だった。

 

かつて、日本のモノ作りは「匠の世界」と言われ、作り手の魂のこもったモノ作りが為されてきた。

そして戦後、松下幸之助氏が唱えた「水道哲学」の思想(水道哲学とは、松下幸之助の語録に基づく経営哲学である。水道の水のように物資を潤沢に供給する事により物価を低廉にし消費者の手に容易に行き渡るようにしようという思想。)によって、日本の産業界は発展し、一般市民も冨を増大させてきた。

まさに、「企業は社会の公器である」と経営理念に掲げた松下電器の「産業報国の精神」そのものが実践された成果だと思う。

その後90年代に入ってバブルが崩壊。

このときは、まだまだ日本の経済は回復するだろうと高をくくっていた。

しかし、我々製造業はそう簡単に上向かない。

 

そしてさらに2008年にはリーマンショック。

円が80円台というこれまでにはまったく考えられなかったような状況が続く。

この事態は経済崩壊と言ってもいい。

 

 

私自身はこれまで、国の「所得倍増計画」を地で生きてきた。

ある意味、昭和の申し子とでも言おうか。

そしてその奇跡的な40年の右肩上がりの時代を駆け上ってきた。

この頃は、皆が金持ちになることで、平和で幸せになれると信じていた。

そんな奇跡の時代を過ごしてきただけに、バブル崩壊後もまだまだ回復すると思っていたのだ。

なぜなら、私をはじめ日本人はまだ幸せになったという実感が無かったからだ。

 

私の本業である(株)シナガワは、創立25周年を迎えたときに念願のパッキン業界での売上げ日本一を達成した。そこそこの金持ちにもなった。

しかし、それからほどなく日本経済のバブル崩壊。

これまで目一杯稼働していた量産機が必要なくなり、泣く泣く捨てた。

なぜなら、製造価格の安い中国へ注文が一気に流れていってしまったからだ。

これまでのお得意さんが次々と中国へシフトしていくのを横目に見ながら、こんなにも簡単に価格の安いところへ注文が流れていくのかと、愕然としたものだ。

 

そこから空白の10年。まだまだなんとか景気は盛り返すだろうと期待しながらやってきたが、ついにその兆しは未だ見えない。

 

さて、経済発展を遂げ、金持ちになることを目指した日本人は、本当に幸せになったのだろうか?

家の中にはテレビもあり、あらゆる電化製品が揃っている。

食い物に困る事も無い。

物質的には豊かな生活を送っているが、心はどこかへ置いてきぼりにしてきたような気がしてならない。

私自身、モノ作り人生を振り返ったときに、拭えない空虚感がつきまとう。

大企業の大量生産に必死についていくために、無理な投資をしながら量産機を揃え、社員に残業や夜勤を強いてきた。

しかしその結果、大量の産業廃棄物を作り出しながら、在庫の山に泣かされた。

その結果、私や社員は幸せになったのだろうか?と疑問に思う。

長時間労働で体を悪くした者もいた。

残業、残業で家族関係がぎくしゃくして、毎日パチンコ通いをしながら、癒えぬ気持ちを紛らわせている者もいた。

そして私自身も、経済の土台は工業であると信じて邁進してきたが、この先の生き残りを考えたときに、今のままのモノ作りのあり方は、間違っていると思う。

 

これまでモノ作りは地域に根ざしたものだと思っていた。

ここ東大阪はモノ作りの町だと宣伝し、その知名度を上げるために活動してきた私だが、価格競争で簡単によそへ行ってしまうものだと痛感した。モノ作りの町東大阪ですら、地域に根ざしたものではなかった。

 

そこから私のモノ作りの根幹とは何か?という模索が始まった。

もっと違うモノを作れば良いのか?

もっと違うやり方で作れば良いのか?

もっと安く作る方法を探す必要があるのか?

しかし、今巷にはモノがあふれ、大量のゴミを生み出している。

それ以上何を作れば良いのか?

大量消費を前提にした大量生産。それをアテにしている我々製造業。

根本的な疑問にブチ当たってしまった。

 

たくさんのモノを生み出してきたが、果たしてそれで我々は幸せになったのか?

欲しくも無いモノをたくさん生み出し、大量のゴミを作り出してきた。

 

そして食品もまた、工業製品と同じように効率優先で作り出してきた。

大量の農薬、大量の添加物を加えた工業製品のような食品は、多くの不健康な人を生み出し、国の医療費を圧迫している。

一体この現状は何なんだ?

豊かさを追求してきた結果、これが幸せになったと言えるのか?

 

私の中で工業の発展に翳りが見えたとき、自然と農業の世界に目が向くようになった。

人が生きていくために必要不可欠な、健康な食料をつくらなければ!と思うようになった。

これからのモノ作りを考えたときに、モノ作りの根幹は農業であると思った。

 

現在は、食料の大半を輸入品に頼っている。

そんな中で今の日本の農業は俗にいう「3ちゃん農業」(大黒柱の亭主は外へ働きに出て、おじいちゃん、おばあちゃん、おかあちゃんが行う農業のこと。)が中心で、しかも農業人口はかなり高齢化している。

長年放置された耕作放棄地もかなりある。

しかしそこに、新たな産業と雇用が生まれる可能性を秘めている。

 

農業の世界も効率化を図るために化学肥料に農薬、除草剤、そして人工的に交配させた一代限りのF1種が広まり,環境への深刻なダメージを与えている。

そして何より、農家への経済的ダメージも大きい。

F1種とは、常に揃った品質の野菜ができ、生育も早く収穫量も多い。生産農家にとっては栽培計画がたて易く、歩留まりも良いというメリットがある。

味は良いが大きさや形も不揃いな固定種の野菜と比べて、F1種は大量生産に向いている事から、種苗業界は競ってF1種を開発することになった。

その結果、日本をはじめ世界の農業は、たった数社の巨大種苗企業に牛耳られることになった。

 

国の農業政策の大失敗と、我々国民が金儲けに踊らされた結果、日本の農業は悲惨な状況に追い込まれている。

若者は「農業では食えない」と、仕事を求めて都会へと出て行った。

だが、地方の農村には幸いにもまだ知恵者と呼びたい人生の先輩が、まだまだ健在でいらっしゃる。

後期高齢者と呼ばれる年齢にさしかかっても、まだまだトラクターを操り、日の出とともに仕事をされている。

まったく、頭が下がる思いだ。

この知恵者たちが健在なうちに、なんとか若い世代との世代間連携を作りたい。

そして、今は荒廃してしまっている耕作放棄地を、緑豊かな農地に甦らせたい。

 

世界に目を向けてみると、日本のような水と土に恵まれた国はそう多くない。

そして視線を日本に転じれば、手つかずの荒れ地が広がっている。

限界集落の成れの果ては、集落ごと植林の山に取り込まれてなくなってしまっている。

実に残念だ。

 

私自身は、東大阪から隣の奈良へ居を移し、週末を中心に農作業のまねごとを始めた。

ご近所の先輩方に初歩からアドバイスを受けながら、ネコの額程の畑を耕している。

今はまだ、野菜は作るよりむしろ、ご近所からもらう方が多い。

そしてこれがまた、立派に育っていて、うまい。

 

誰でも最初は素人だ。

これからも、モノ作りの根幹である農業にチャレンジしていきたい。

 

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